私がリクルートで営業マンとして働いていた時のことです。
「青山通りの左側のビルを1日100軒まわりなさい」と教えられて
いました。そうすれば妙な照れやくだらないプライドがなくなるから
でしょう。まさに地獄の特訓でしたが、実行した新人はみな2か月で、
ほぼ一人前になれました。
どぶ板営業も毎日100軒飛び込んでいると、恥ずかしさはなくなるし、
嫌われないための振る舞い方や、相手をひきつける話術が自然と
身につきます。
学生から「新卒試験、20社も受けたのに1社も決まらないんです」と
相談を受けたら、私ならば「とりあえず100社受けてみなさい」と
アドバイスします。新卒の時じゃないと、100社にアプローチする
なんて不可能。かりにすべて断られるようなことがあれば、それで
本を書けばいいのです。『なぜ私は100社とも採用されなかったか』
というタイトルのレポートを持ってきたら、私なら一発で採用します。
新潮社から初めての著書を出版した時、私は100軒の書店を
まわって売れ行きを観察しようと思い立ちました。すると30軒
まわったところで、何となくその先のものまで見えてくるのです。
自分の理想とする場所に本が置かれていない場合が多く、
その理由もだんだんわかってくる。100と決めて取り組むと、
物事の本質が掴みやすいのかもしれません。
結果的に100まで届かなくとも、途中で全体像が観えることが
往々にして起こります。まずは数字を決めてからゲーム感覚で
挑戦してみることをおすすめします。
藤原 和博 著 「35歳の教科書」より
藤原 和博(ふじはら・かずひろ )1955年東京都生まれ。著述家。
東京大学経済学部卒業後、1978年リクルート入社。
東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任。
2003年4月から2008年3月まで東京都初の民間人校長として
杉並区立和田中学校の校長を務めた。