ふつうであることは、有り難い

昔、外国に遊びに行っていて食あたりを起こしたことがあります。

仕事の時でなかったからまだ良かったものの、数日間は何も食べ

られない状態が続きました。

日本に帰ってから成田のクリニックで診察してもらい、点滴を打って

ベットで数時間横になってからやっと家に帰りつくことができました。

その後も数日間、普通の食事をとることはできませんでした。

おかゆから始まって徐々に体を慣らし、やっと数日後に白いご飯と

みそ汁が食べられた時のおいしさは格別でした。

人間いつも普通に過ごしていると、だんだんといろいろなことの有難み

が薄れてきます。

知り合いが入院した時も、前の晩に少し舌がもつれて頭が痛かった

そうです。

夜も遅いので翌朝病院に行けばいいやと寝てしまいました。

翌朝病院に行ったのですが、脳こうそくでした。

そこから様々な手当てをしたのですが、時間がたち過ぎていたために

右手と右足に麻ひが残ってしまいました。

前の晩に病院に行っていれば、とすごく悔やんでいました。

ふだんは当たり前すぎて感謝をしない、普通に物が食べられることや

、普通に歩けることが本当は一番大事なことなのかもしれません。

世の中には宝くじに当たるとか、会社で昇格するとか良いことが起きる

ことだけが良い運だと思っている人がいます。

これは大間違いです。

良いことが起きることよりも悪いことが起きない方がはるかに重要です。

ふつうとは、あり得ない「 幸せ 」なのです。

坂井 優基 著 「 パイロットが空から学んだ運と縁の法則 」 より

坂井 優基 ( さかい・ゆうき )

現役機長。747機長として世界38カ国以上をフライトする。

飛行時間は1万数千時間。指導機長として多くの機長、副操縦士

を育て、安全を主テーマに多くの著作がある。

趣味は旅行と読書。好きな音楽はクラッシク、ジャズ。

ステイ先でジャズライブを聴きにいくのを楽しみにしている。

一番好きな時間は、パリのカフェでカフェオレを飲みながら本

を読んでいるとき。